イギリスには大小問わず星の数ほど動物のレスキューセンターがある。犬や猫だけでなく、フェレット、ウサギ、ポニーなど、種類も様々。有名なところだと、RSPCA、ブルークロス、キャッツプロテクション、ウッドグリーンアニマルシェルターズ、日本でもよく知られているバタシードッグズアンドキャッツホームがある。その他、それぞれの地域で市が運営するレスキューがある。
NCDL は現在では DOGS TRUST と呼ばれ、イギリスで最も大きい犬のチャリティ団体の一つだ。捨て犬、迷子犬、飼い主が何らかの理由で飼いきれなくなった犬を保護し、新しい飼い主を見つけるまで一生面倒を見る。死に直結するような病気でない犬なら、例え行動に問題があったり誰も貰い手がいなくても、決して安楽死させないことをモットー(We never destroy a healthy dog)にしている。
3本足でもなんのその。治療後、新しい家族のもとへ行きました。[photo by Dogs Trust]
また特に有名なキャッチコピーが「A dog is for life, not just for Christmas」(犬はクリスマスの間だけ生きるわけじゃないよ)。これは元々、クリスマスの時期にプレゼントとして犬を与え、その後きちんと面倒を見ずに捨ててしまったり虐待してしまったりする人が増えたことを危惧して作られたもの。残念ながら現在でも、レスキューが犬で一番混む時期はクリスマスが終わった後だが、このコピーが書かれたステッカーを車に貼っている人は大勢おり、英国内でこのフレーズを知らない人はいない。
例えば、イギリスでは年間およそ10万頭の犬が捨てられたり迷子になって見つかり、2008年現在、全国で1日平均18頭の犬が安楽死処分となっている(年々減ってきてはいるが、比較すると、日本では年間30~70万頭の犬猫が殺処分)。
DOGS TRUST は全てのセンターを合わせて1,400頭の犬を収容することができ、2007年は1万6千頭の犬が DOGS TRUST のお世話になった。1センターで犬に与えるおやつのビスケットは1週間で1,000個以上、与えるフードは1日37キロ、1日に80枚の毛布を洗って乾かし、職員やボランティアが犬の糞を拾う回数はなんと1時間に23回にも及ぶ。1匹の犬がセンターに入り、出て行くまで平均して10万円をかけている。
これらの団体の資金源のほとんどは遺産によって賄われている。身寄りのない犬に遺産を残そうという日本人はあまりいないだろうが、チャリティー精神と動物を愛する心を大事にするイギリス人は、人生の最後を慈善事業に捧げ、恥ずかしくない生き方をしたと誇りに思う為に、莫大な遺産をチャリティー団体に残すことが多い。
遺産の他には、多くの人が DOGS TRUST に月に数百円の寄付をする契約をしている。国からの援助はないので、その他にはグッズの販売やイベント等で資金繰りをしている。私の犬も間接的にどこかの故人のお世話になったと思うと、感謝の気持ちでいっぱいだ。
スポンサードッグといって、家で犬を飼うことはできないけれど、DOGS TRUST に預けながら養育費を補助し、自分の犬のように毎日会いに来て散歩に連れ出す人もいる。スポンサードッグは、問題行動など何らかの事情により、新しい家を見つけることが困難であると見極められ、一生をレスキューの中で過ごすことを定められた犬である。
施設内はとても清潔で、犬達には広い犬舎や、寝床になるソファ、充分な御飯が与えられる。職員やボランティアによって、散歩にも1日3回以上連れて行ってもらい、施設に併設している草原で、リードを外し、のびのびと走る事もできる。
一般に、犬の里親施設というと暗く臭いというイメージが付きまといがちで、私のレスキューセンターのイメージもまた「貰い手のない可哀相な犬が集まる収容所」だった。しかしそこは明るくて綺麗で楽しい雰囲気だった。それには多大な努力が成されていた。
DOGS TRUSTはこんなところ。
イギリス人の多くが、特別な犬種のこだわりがない限り、犬を飼う場合にまずレスキューセンターに行くのがよくわかる気がする。それでも、ブリーダーから犬を買う場合も、レスキューから犬を引き取る場合も、同じように審査が厳しい。沢山の制約もある。命はお金だけ出せば買えるものではないのだ。
最近よく知られているように、イギリスのペットショップでは犬猫は売っていない。生体は魚、小鳥、ウサギやハムスターなどの小動物に限られている。また、例え1匹の金魚をペットショップで買うにしても、もし家に水槽がなければ売ってもらえない。まず水槽を買って、しばらくの間、そこで水を循環させて環境を整えてから、もう一度来てくれ、とスタッフに言われることがある。
例外として、ロンドンの老舗デパート、ハロッズのペットショップは生きている子犬や子猫を販売している。ストレスを防ぐため、お客さんが犬を見れる時と見れない時があり、購入となるとマネージャーが厳しく審査をし、衝動買いを防いでいる。しかしながら2005年に、このペットショップの犬の繁殖元が、ブリーダーとしての許可を持たない、ずさんなパピーファーム(金儲けを目的に考えなしに犬を大量に繁殖させるブリーダー)であったことが BBC の秘密調査によって明らかになり、問題になった。
イギリスには、「Under the Breeding and Sale of Dogs Act (1990)」という法律があり、販売目的の子犬を年間5頭以上産ませる人間は、全員、ライセンスを取得しなければならないが、そのお話はまた他の機会にしよう。
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素敵な記事を読ませてもらいました。
たくさんの人が月に数百円の単位でも寄附を仕様と言う気持ちがある国って良いですね。
寄附っていうと、みんな高額な事を頭に浮かべると思うけれど、小さな金額でもたくさんの人が、恵まれない動物の為に寄附をしようと思えば、もっと日本での犬達の状況も良くなるのではと思いました。
投稿: Tinako | 2008/10/18 13:24
Tinakoさんこんにちは。コメントありがとうございます。
犬をレスキューするといっても、なかなか簡単にできるわけではないと思っています。レスキューをしても人が集まらなければ、そこに犬がどんどん溜まるだけになってしまいます。人々が犬をここから引き取りたい!と思う環境や、安心感、それはボランティアの域を超えて、ビジネスに発展しなければならないと思っています。
きっと誰でも、健康面に信頼がない、不衛生で、愛想のない、レスキューからは引き取りたくはないでしょう。
獣医によるチェック、避妊去勢など事前にされるべきこと、マイクロチップや保険など、人々が安心して犬を引き取れる環境を作ることはレスキューにとって大きな責任であると思っています。そしてそれにはやはりお金が必要です。寄付をするにしても、信頼のないところには寄付はしにくいし、寄付をされたら収支を細かに説明する必要もあります。なかなか理想論では上手く行かないことなのですが、日本の近い将来に期待しています。
投稿: 新木美絵 | 2008/10/19 21:45
初めてこちらにお邪魔しました。考えさせられますね。。。日本はこんなに小さい国なのに送られてしまう子達が多過ぎます。何とかしなくては、と思いつつも何をしたらいいのかわからず。でも月に数百円の寄付でも積もれば大きくなります。まずはそこから。我が家にも愛すべき3匹の家族がいます。この子達も送られてしまう子達も同じ命である事を改めて肝に銘じて、出来る事から始めて行きたいと思います!
投稿: えむじぇい | 2008/10/24 00:59
えむじぇいさんこんにちは。コメントありがとうございます!
本当に、送られる数の多さは、人口と比較しても、日本は多いことがわかりますが、やはり年々減っているのはかなりの救いですよね。70万匹殺されていたのが、30万匹となってきて。
意外にも、動物愛護センターでどうやって犬やネコたちが殺されているのか知らない人も多いですよね。辛くなるから見ないふりをする人もいる。センターにももっと予算があれば、人道的な安楽死ができるかもしれませんが、今は大きな箱の中で酸素をなくして窒息させ、動物は痙攣して死んでいくしかありません。
犬も猫も、家畜となる牛や豚なども、「痛い」ことや「苦しい」こと、「悲しい」ことや「辛い」ことが人間と同じようにわかります。最後まで人間が大好きで、純粋に人間を信頼している子もいます。そういう簡単なことだけど、あまり知られていないことを、周りに伝えることもきっとできることだと思っています。
動物にかかわる仕事は大変で、レスキューの現場の方には頭が下がる思いですが、本当に、ちょっとの寄付でもチリも積もればで大きな力になりますよね。日本にも、きちんとバックグラウンドのある信頼できる組織があれば寄付もしやすいでしょう。最も、小さな団体も寄付はあればあるほど助かることだと思うので、自分のお気に入りのレスキューを見つけるのも、意外に楽しいことかもしれません。
投稿: Mie Shinki | 2008/10/24 18:48