ニュージーランドといえば羊。
最近は鹿肉の需要に押され気味とはいえ、ニュージーランド産のラム肉や羊毛製品は世界中の多くの国で愛されている。そんな羊の国の働き手として欠かすことのできないファーマーのパートナーたち。
それがシープドッグ。
シープドッグと聞いて思い浮かべるのが白と黒のツートンが愛らしいボーダー・コリーだが、ニュージーランドにはニュージーランド原産のシープドッグがいる。南半球に浮かぶこの島国の地形と気候、労働条件にあったシープドッグたち - 「ハンタウェイ」と「ストロング・アイ・ヘディング・ドッグ」。
ニュージーランドでシープドッグといえば、このトリオなのです。
仕事場に向かうシープドッグたち。
羊は草を食べて生きているので、食糧のある場所を求めて転々と移動しなくてはならない。ここを食べたら次のパドック、食べ終わったら次のパドック、というふうに。
そのときの季節や気象条件によって山の上で生活させたり、逆にふもとに戻してきたり。のんびりとしているように見える羊たちの一生はまさに「移動」。その羊たちを、一頭残らず目的地まで移動させる責任を負っているのがこのシープドッグたちなのだ。
彼らにはそれぞれの「得意分野」がある。

Strong Eye Heading Dog。
名は体を表すというか、まさにその通りの働きをするわけだが、この犬は「眼力」をもって羊を誘導する。
そのするどい眼力をもって、少しはなれたところから羊を睨みつけながら、取り巻くように羊のグループを誘導する。群から離れてしまった羊を見つけるのもこの犬の役割だ。大変すぐれた視力の持ち主なのである。
そしてこの犬は吠えない。
そして噛んだり、襲いかかることをしないとされている。
「眼力」をもって、羊たちの群れに網をかけるようひとまとめにして「先導」するのがこの犬の役割。
頭の後ろに必ず「白い部分」の被毛があり、どんなテレインを移動中でもファーマーが犬の位置を確認しやすいようにできているそうだ。
この写真のハンタウェイはペット。目が見えないためにファーマーよりこの女性が引き取った。
続いて「ハンタウェイ」。
とても勇気を持った犬で、怖がったりすることをしない。
この犬は「吠えて」羊の群れをまとめる。とても忠誠心が強く、働き者。
必要とあらば、群になった羊たちの背中の上を飛び乗って歩きまわることさえもする。通常いくらシープドッグとはいえ、羊たちとの接触は緊張を伴うようで、避けることが多いそうだがハンタウェイだけは例外。
「勇気を持った恐れ知らずの犬」の所以はこんなところからきているのかもしれない。
そしてマルチな才能を発揮するのが、おなじみボーダー・コリー。
これらシープドッグのうち、犬種としてケンネル・クラブに認証されているのはボーダー・コリーだけ。ハンタウェイやストロング・アイ・ヘディン グ・ドッグがドッグ・ショーなどに出てくることは無い。彼らが賞を狙うとしたら、ニュージーランド国内で40年以上続いている「牧羊犬トライアル」だ。
こういった「シープドッグ」として活躍している犬はニュージーランド国内に20万頭以上いると言われている。 彼らで5千万頭の羊と、6百万頭の牛の誘導を行っている。
国を支える産業に携わっている彼らは、無くてはならない存在なのだ。
牧羊農家と関わる生活をしていない限り、生粋のシープドッグたちに出会う機会はほとんど無い。広大な土地を、羊や牛を追いかけて走りまわっている彼らに朝と夕方のお散歩は必要ない。
そんな彼らを、シープドッグ・トライアルやイベントなどでたまに見かけることがあるが、眼光の鋭さがとても印象的だ。
一度、シープドッグの引退犬とお散歩途中に出くわしたことがあるが、ちょっと冷やりとさせられた。彼らはペットではないのだ。人間に甘える表情は無かった。そこにあるのは忠誠だけ(小規模農園などでは半分家庭犬としてペットとして扱われている犬もいます)。
シープドッグたちの瞳に映っているのはファーマーの姿だけ。シープドッグたちの耳に届くのはファーマーの指示のみ。
まさに「パートナー」であるシープドッグたちの生活環境はペットのそれとは違う厳しいものだけど、シープドッグとしての誇りをまとった彼らの姿はとても美しい。
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初めて知りました。
シープドッグ以外にも、NZ原産の牧羊犬がいた事を。
ケンネルクラブに登録されていないんですね~。
吠えずに眼力だけで誘導するなんて!
世界は本当に!広いなぁ~と思いました。
忠誠心でお仕事をこなしてるなんて、
人間の私も見習わないと行けませんね。。。(^_^;)
投稿: じゃくぶら | 2008/10/06 14:56
じゃくぶらさん、こんにちは。
初コメント、ありがとうございます!
そうなのです。 シープドッグと一言でいっても、世界にはたくさんの種類がいます。 ニュージーランドで活躍しているトップ3が記事中の彼らですが、先日オークランド郊外ではなんと!ビーグルが羊の誘導をしていましたよ。 車で移動中だったので、止めてお話を聞くことができなかったことがくやまれます。 機会があったらまた出向いてみますね。
日本にも稀ですがいるはずです、「ヘディング・ドッグ」と「ハンタウェイ」。 ドッグランなどで、気をつけてみてみてくださいね。
投稿: ゆう@羊の国 | 2008/10/06 15:35
少し前、ふれあいの場でハンタウェイに出会って一目惚れしたんです。
なかなかお目にかかれない犬種なので、我が家に迎え入れることは
無理だろうなと思いつつ・・・
ゆうさんの記事を見て、NZの広大な牧場で羊を追ってるハンタウェイくんをいつか生で見たいなーと思いました。
投稿: mito | 2008/10/06 16:03
>>Mitoさん、こんにちは~。
ハンタウェイ、ペットとして一緒に暮らしている家庭、とてもたくさんあります。 でもやっぱり運動量がとっても必要な犬であることは間違いないみたいですけれども。
でも、一緒に暮らしてる人たちは例外なくはまってますね。
忠誠心と聡明さ、何よりも魅力みたいです。
うちの近所にもMAXというハンタウェイがいます。
エビス(ラブラドール、5歳男子)とすごく気があうので、私も大好きな犬種のひとつなのです。
コメントありがとうございます!
投稿: ゆう@羊の国 | 2008/10/06 16:19
まずは、新連載スタートおめでとうございます。
ブログ、スポーツ誌、アイリス、ワン、そしてこの連載。
どれも楽しみにしてますので、がんばってください!
ところでシープドッグについてですが、
ボーダーコリーは、日本でもペットとして飼っている家庭が多いですが、
ほかの2種については初めて知りました。
やはり牧畜が盛んな国は違うなあ、と妙に感心。
表情もどこか「軍人さん」のような緊張感がありますね。
私は一度、仕事がらみでチベタン・マスチフを観たことがありますが、
何というかペット犬とは迫力が違い、なでるのをためらって(びびって)しまいました。
ゆうさんの記述にあるように「眼」が違うんですよ~
でも飼い主には従順、というか絶対服従でした。
投稿: ゆっぴ | 2008/10/06 17:03
>>ゆっぴさん、コメントありがとうございます!
ボーダー・コリーはこちらでもとーっても多いです、ペットとして飼われている家庭。
そして、ハンタウェイもすごーく多いんですよ。
吠えるし賢いし、ということで番犬向きのようですね。 でも、ランではとってもプレイフルで、他の犬ともとても上手に遊べている印象があります。
やはりその聡明さから、色んな環境に対応できるという証なのでしょうね。
うちのエビス(ラブラドール、5歳)は鬼ごっこが大好きで、特に追いかけられることに至上の喜びを見出すようなので、「追いかけてくれる」牧羊犬は大好きな犬種なのです。
投稿: ゆう@羊の国 | 2008/10/06 17:15
シープドックといえばボーダーコリーとずっと思ってました。
NZ原産の牧羊犬。ストロング・アイ・ヘディング・ドッグも初めて見ましたし。一見とても可愛いわんこですが、すごい働きをするんですね。シープドックとしての誇りを持っている・・・普通の家庭で暮らすわんこたちとはまた違った輝きを持つんでしょうね。
かっこいい。
ゆうさんの文章もコミカルタッチのものしか読んだことがなかったので、ゆうさんのカッコいいところも見れましたね。(^^)
投稿: しま | 2008/10/06 20:01
>一度、シープドッグの引退犬とお散歩途中に出くわしたことがあ
>るが、ちょっと冷やりとさせられた。
これ分る気がします。
どっぷり家庭犬も可愛いですが、本来の目的のために訓練され
その性質が全身から溢れ出る犬にも魅了されます。
オーナー(ファーマー)しか見てない、
オーナー(ファーマー)の声しか聞こえない、
こんな犬の姿を見るとゾクッとします。結構そういう犬が好きなので。
(ドベ育ちなので使役犬タイプが好きです)
ただ飼うとなると...シープドッグの運動量は半端じゃないですからね。
私では幸せにしてあげられないだろうから羨望の眼差しで眺めるだけですかね。
投稿: 六房 | 2008/10/07 01:11
>>しまさんへ
先日はドライブ中に、ビーグルが羊を集めているのを見ました。
知り合いの鹿ファームでは、ラブラドールとゴールデンレトリーバーがそこの牧場のワーキング・ドッグとして頑張っています。 そのこたちはすごく愛嬌もあります(笑)。 鹿を誘導するというよりは、牧場のマスコット犬という感じでしたけど。
でもビーグルはびっくりしたな~。 またその方面に出かけて、できればお話を聞きたいと思っています。
>>六房さんへ
そうなんですよ。 引退直後のシープドッグで、目つきが全く違ったんですね。
クロエビスともちろん一緒だったので、瞬間に「あ、これはヤバい」と思いました。 ファーマーさんがご夫婦でいらしたので引き止めてくださったのですが、ヒヤリとしましたね~。
投稿: ゆう@羊の国 | 2008/10/07 05:45
すごい!これぞ”羊の国”ってカンジですね。
その土地にあったワンコたちと、ヒト。
ペットでは味わえない魅力がありますね。
また、楽しみにしています。
投稿: かか | 2008/10/07 12:35
また読みに来てしまいましたぁ!(^_^;)
で・・・ホ・ホ・本当ですかぁーー??
ビーグルが牧羊犬として、お仕事してるって!!
本当にビックリしてしまいましたっ!
ビーグルは、狩猟犬ですよ~!
それに体も小さいのに・・・。是非!見てみたいです。
嗅覚が犬一倍!優れている犬種なので、
成田や海外の空港で、嗅覚犬としてお仕事してるのは、
知っていましたが、まさか!牧羊犬とは・・・。\(◎o◎)/
やはり!世界は広いですねぇ~。
今度ランに行ったら「ヘディング・ドッグ」と「ハンタウェイ」君を、
見つけてみたいと思いますvv
次の連載も、楽しみにしています♪
投稿: じゃくぶら | 2008/10/07 13:05
はじめまして、ずーっと前から、羊の国のクロエちゃんとエビス君のブログを読ませてもらっていました。
私、ボーダーコリー2頭飼っています。何年か前はシープドッグ教室にも通っていました。年長の9才のボーダーはブリーダー崩壊で2才の時にうちに来ました。もう一匹5才のボーダーは赤ちゃんからのいただき犬です。
両方とも目のするどさやらはありませんが、一日4時間くらいの散歩が必要です。そうしないと疲れないみたい。
それさえ出来れば、家庭犬としても最高にかわいいです。
あっ、飼っている犬は皆かわいいか。
投稿: しょまま | 2008/10/07 15:41
>>かかさんへ
うん、やっぱり犬たちには出身地の理由があるのだなあと、しみじみ思った次第です。
ニュージーランドは割と坂が多くてごつごつした岩場を本拠地とした農園も少なくないので(羊やヤギはそういう場所は結構得意)ハンタウェイのようなフットワークの軽い犬ができたみたいですね。
>>じゃくぶらさんへ
はい、ビーグルが吠えて羊を誘導しているところをこの目でしっかり見ました。
ファーマーさんが真後ろに立っていて、指導している真っ最中でしたけども(笑)。
そういえばオークランドの空港の嗅覚犬はビーグルとラブラドールです。
>>しょままさんへ
はじめまして。 コメントありがとうございます。
一日4時間!! しょままさんの「シープドッグ」という犬種を受け入れた愛情の深さが感じられます。
私も一日3時間弱のお散歩に行ってますが、日によっては本当に大変。
しょままさんの御苦労が想像つきます。
投稿: ゆう@羊の国 | 2008/10/07 19:21
わあ!連載おめでとうございます!
ゆうさんのファンだし、このdog actuallyのファンだし、とても嬉しいです!
いつもと違った感じで、またいいですね!
このハンタウェイさん、前に読んだ子ですね。あの記事も素敵でした。
これからこちらを訪ねるのが、また楽しみになりました♪
投稿: ひより | 2008/10/07 22:11
初めまして。
検索から伺わせていただきました。
と言っても、実は昔ホタパパさんとゆうさんの企画で埼玉のドッグランで一度お会いしているのですが・・・
私自身もNZヘディングドッグ飼いの1人です。
ところで記事にあるストロングアイですが、実際NZの牧羊夫の間ではストロングアイ・ヘディング・ドッグという呼ばれ方はされていないようです。
EYE DODとは本来ボーダーコリーを主に、目を使って羊を誘導する牧羊犬全種を指す言い方であり、“ストロングアイ”とは、トライアルなどで素晴らしい目の使い方をしたアイドッグに賛美の言葉として送られる時に使われることの方が多いようです。
しかし、日本ではまだまだマイナーなこの犬種を知っている人達や日本の観光牧場でさえも【ストロングアイ・ヘディング・ドッグ】と呼ぶことが多いです。
では、何故本来存在しない犬種名が日本に渡って来たかと言うと、それには理由があったようです。
下記のサイトは私の過去blogなのですが、羊とNZの牧羊犬達を愛して止まない知人からの記事を許可を頂いて記載させて頂いております。
彼女は、牧羊の勉強の為だけにNZへ渡り、NZの牧羊夫達とも深い親交があります。
宜しかったら見てみて下さい。
http://eye-dog.a-thera.jp/article/687369.html
投稿: ピータン | 2008/10/10 13:00
>>ひよりさんへ
コメントありがとうございます。 返信が遅くなって申し訳ありません。
私もDog Actuallyの大ファンです(笑)。
読み応えありますよね~。(私以外の皆さん、ということです。)
これからも宜しくお願いします。
>>ピータンさんへ
おひさしぶりです。 覚えてますよ~。
その節はどうもでした。 実はあのとき、「ヘディング・ドッグ」をはじめて知ったんですよね。
補足、ありがとうございました。 私が話をお伺いしたファーマーさんも「ヘディング・ドッグ」と呼んでらっしゃいましたよ。
ただ、今回はこの犬種の紹介記事だったし、ハンタウェイに比べて海外でもペットや牧羊犬として活躍している「ストロング・アイ・ヘディングドッグ」なのでこちらの名称を使わせていただきました。
投稿: ゆう@羊の国 | 2008/10/10 15:02