トップ >  暮らし・日常 > コッツウォルズで犬を飼う (4) - スペンサー・ザ・ラーチャー

Charlie the Lurcher

[Photo from Charlie Dave]

スペンサーの話は欠かせないと思っている。

たくさんの犬の中で、7歳のラーチャー犬、スペンサーは私の目を引いた。スペンサーは個室の犬舎のソファに寝そべったまま、静かに私を見ていた。吠えもしなければ、尻尾も振らなかった。

ラーチャー。英国やアイルランドにしか見られない犬のタイプで、サイトハウンド内もしくはサイトハウンドの血が含まれたクロスブリード(雑種)のことを言う。主に使役の為に、父母犬の特性を狩猟に生かせるように今でも独自に繁殖されており、イギリスでは他の純血種と並んで比較的ポピュラーな犬だ。

耐久性のあるラーチャーはグレイハウンドより長く過酷な狩猟に耐えることができ、ワイヤーヘアは皮膚を傷つけにくい(スムースヘアも存在)。ウィペット等の血を加えることで、ブッシュなどの自然の障害物を上手にかわし、直線はグレイハウンドの如く草原を速く走り、獲物を捕まえる。

レスキューには多くのグレイハウンドやラーチャーの姿がある。彼等はイギリスでは日本の和犬の如く、数が多い。ブリードとしての正式な血統を持つグレイハウンド(ショータイプ)はイギリスでは絶滅の危機に陥っているものの、レース用や狩猟用に生産されるグレイハウンドやラーチャーは、レスキューセンターでは常連となっているのが現状。

特に2004年11月に、犬を使った狩猟を禁止する法律、Hunting Act 2004 が議会を通過してから、更にレスキュー数を増やし続けている。ヘアコーシングやルアーコーシングといったスポーツ、草レースの為に生産されることも多い。レースや狩猟はイギリスでは難しい立場に置かれており、それについてはまたそのうちお話する。

兎を実際に放し、追いかけさせるスポーツ、ヘアコーシング

イギリスには「ジプシー」が大勢いる。馬車やキャラバンで移動し、旅を続けている人々のことを言う。ジプシーにも、馬車ではなく自動車を使うものや、仕事を持つものなど、様々な種類があるが、本家のジプシーにとって、馬は馬車を引く機動力で、犬は食料を捕獲するパートナー、人は火を起こして調理する。ジプシーの子供たちは学校には通っていない。

Dobbins

ヨーク州のジプシーキャラバン、郊外にいることが多いが、時に街の住人とトラブルになることも
[Photo from Ronald Hackston]

ジプシーは、野兎(hare, rabbit)などの食料確保の為にラーチャーを繁殖させる。子犬が6ヶ月になると狩猟のトレーニングを開始する。秀でた狩猟能力を持つ犬だけキープし、他の子犬は売りに出す。そして犬が年老いたり怪我をしたりすると使役として役に立たなくなり、放棄することもある。

DSC_0198DSC_0197  Ferreting

フェレットを使った兎猟。フェレットが兎を穴から追い出し、やはりラーチャーやテリアが兎を捕まえる
[Photo from northdevonfarmer]

私はスペンサーを見てとても綺麗だと思った。寒くないように犬用のラグを着ていたが、その美しい歩様は遠くからでも目に付き、白に灰色のマスクを持つ芸術的な模様、ピンと立った耳、一点を見つめた目と静かに緊張している尾、美しく気品のある犬だった。

スペンサーは生まれつき、心臓、肝臓、脊椎に問題を抱えていたため、最初の飼い主に捨てられた。次に出合った飼い主は、スペンサーにかかる医療費が莫大なものだと知り、スペンサーを酷い状況下に置き、自然に死なせようと思っていた。不衛生で充分な餌もない悪環境の中で、スペンサーの病状はみるみる悪くなり、歩く事さえもままならなくなった。この時、スペンサーはまだ1歳の誕生日も迎えていない。

運良くスペンサーは DOGS TRUST に引き取られ、温かい看護によって回復に向かった。歩く事ができるようになり走る事ができるようになった。そしてスペンサーは8歳を控えた春まで、そこで一生を過ごす事となった。

Photo

いつも遠くを見つめ、決して媚びなかったスペンサー

スペンサーを含めて、5匹ほど候補に挙がった。スペンサー以外は皆健康であったが、「この子は予期しない噛み癖が過去にある」「この子はよく吠えるだろう」「この犬はちょうど引き取り手が見つかった」と、次々に候補は消されていき、スペンサーが残り、私はスペンサーに決めた。

スペンサーは7年も DOGS TRUST にいたので「フォスター・ドッグ」という地位を与えられていた。これは、スペンサーにかかる一切の獣医費用を、全て DOGS TRUST が負担するという制度。なんともありがたいシステムだろうか。そうでなければ引き取れまい。

犬舎には子犬もいて、可愛さに目を奪われたが、将来が未知数な子犬より、どのくらいの大きさで、どういう性格か既に知られていて、病気の有無がわかっており、ベーシックな躾の入っている成犬のほうが、自分にとっては都合がよかった。

それに犬舎の壁のいたるところに、それぞれの犬種の紹介が可愛いイラストと共にかかっていて、「グレイハウンドやラーチャーはその俊敏な見かけとは裏腹に温和で、家の中では最も気持ちの良い場所で猫のようにすぐ丸くなるカウチドッグと呼ばれています。彼らをソファに上がらせないことはできないでしょう!外に出ればとてもアスリートな犬で、6フィート(1m80cm)のフェンスも越えてしまいますし、走ってもぶつからない広い庭や公園が必要です。小動物を追いかけるので猫と一緒には住めないことが多いでしょう」と書いてあった。

希望通り、短毛、物静か。家のフェンスは高かったし、隣には広い公園がある。このタイプの犬は自分の生活にピッタリフィットするのではないか、と思った。

※ラーチャーは日本に適した犬ではありません。

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コメント






思わず最後の赤字の注意書きで笑ってしまいました。

投稿: lucy | 2008/11/15 12:26

彼らが日本の気候や環境に合わないのは事実ですし、残念なことに、飼育環境や後先のことを考えずに珍しい犬をどんどん日本に入れてしまうコレクターのような方々もおりますので、許可のもと、つけさせていただきました。

投稿: mie shinki | 2008/11/15 13:46

ラーチャーはカナダでも繁殖させてるようです
ブリーダーに拠っては雌だけを残し雄は捨てたり
中にはレスキューに渡すブリーダーも居るけど
レスキューもリタイアサーレーを抱えて万年
満員御礼状態なので大変なようです

投稿: ままち | 2008/11/15 17:13

ラーチャーをブリードの仲間入りさせるか否かの討論も最近さかんになっていますが、スタンダードがほとんどない彼らがそういうことになることはないだろうと私は考えています。
ファイストやカーなども例えば、私は見たことはないですが、彼らも似たような境遇かもしれません。使役としての犬は実用として生きる故に難しいところです。

投稿: mie shinki | 2008/11/15 20:10

 
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