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サンポの娘、トッポが誕生したときの話をしよう。

あれは日韓共催のサッカーW杯が開催された年の冬だから、もう6年前になる。僕と妻は5歳のサンポに子供を産ませることにした。

それまでも「サンポの子供が欲しい」という声が各方面から寄せられていた。サンポは六本木のホステスに飼われていて処分されそうなところをもらってきた犬だ。そんな過去があるにもかかわらず性格は天真爛漫だし、主人がろくにしつけをしてないのに従順で賢く、運動能力にも優れている。おまけに小顔でスタイル抜群の美女だから、サンポに接した人々は「サンポちゃんみたいな犬を飼いたい」と、魅了されてしまうのである(もちろん、僕はかなりの親バカです)。

僕らもニホとサンポ以外にもう1頭、レトリーバーが加わってもいいかな、とは思っていた。広々とした田舎で暮らしているから、3頭になっても環境的に困ら ない。それにニホもサンポも、猫のように軽々と抱き上げられる時期を脱した生後6ヶ月にわが家にやってきた犬である。それはそれで満足しているけれど、次の犬は誕生から生涯すべてにつきあいたいという思いが強かった。

でもいざ実行に移すとなると、ためらいを感じた。自然の摂理として子犬が誕生する場合は別として、人間の作為によって犬を繁殖させる行為は専門家のみが許される領域だと思っていたからだ。

ところが知人から「うちはラブラドールの子犬が欲しいのではなく、斉藤家で産むサンポの子犬が欲しいのだ」とはっきりいわれて、勇気がわいた。

考えてみれば僕と妻は自分たちの手で家を作っている。専門家でもなく、大工仕事も素人だったのに、人並みに暮らせる家を学習しながら楽しんで作りあげた。 それと同じではないか。産まれた子犬を他人に売るわけではない。サンポの子をきちんと飼ってくれる人に譲るための出産、育児なんだから、家作りのときと同じように胸をときめかせながら楽しめるはずだ。そう結論を下し、まずはサンポの婿探しをはじめた。

サンポの父親としての立場からいわせてもらえば、見かけのいい男よりも性格が穏やかな優しいラブラドールが望ましい。むしろ犬のキャラクターよりも、飼い主やライフスタイルに好感が持てるか、といった環境面のほうが大事に思えた。またその後のつきあいなども考えると、相手が近所に暮らしているほうが都合が いい。

いつも世話になっている動物病院の獣医さんに「近くにいいヒト、いませんかねえ」とお見合いの相談をしたら、良縁が舞い込んだ。相手は、うちからクルマで5分とかからない場所で花屋の仕事を営んでいるMさんだ。

「うちの子はシーザーといいます。兄妹は盲導犬になりました。おとなしくて楽な犬ですよ。でも血統書は持ってないんですが、いいですか?」

Mさんの話を聞いて、この人にしようと決めた。僕も血統書は持っていない。あんな紙切れは家柄や学歴と同じで、何の意味もないと思っている。サンポの子を仲間に譲るんだから、「この犬はサンポの子であることを証明する」と書いた独自の血統書を遊び心でつくろうか、と考えているくらいだ。Mさんは職場にいつも シーザーを連れていき、鎖につなぐこともなくのびのびと放し飼いをさせていると聞いて、ますます気に入った。

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そしてサンポが発情を迎えて出血した1週間後、シーザーとお見合いをさせた。初回は近づこうとしたシーザーをサンポが一喝してしまい、怖じ気づいたシーザーは、それ以上アプローチしようとはしなかったが、2回目はすんなりと交尾に成功した。

それから2ヶ月後。わが家に愛らしい天使たちが舞い降りた……。

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