トップ >  社会・環境 > 日本の常識は世界の犬の非常識!? ~アメリカ獣医師会の決断

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たかが尻尾、されど尻尾。尻尾を持たないヒトにはその意味合いは理解しづらいか?

賛否両論熱いコメントに沸いた先日の記事「日本の常識は世界の犬の非常識? ~断尾・断耳は必要か?」で世界各国の断尾・断耳に対する法規制を紹介したその数日後、アメリカからこんなニュースが飛び込んできた。

AVMA revises policy on ear cropping and tail docking
(アメリカ獣医師会、美容整形目的の犬の断尾・断耳に対するポリシーを変更)

おおぅ。法整備着手のトロさに業を煮やした獣医師達が大きく手を打ってきたのだ。「そうきたか...」と将棋の駒の動きを見ているかのように私は少し面白さを感じた。

この度アメリカ獣医師会が発表したのは「美容整形目的の断尾・断耳に反対」という意向。

これまでにもアメリカ獣医師会は99年より「断尾・断耳行為は犬の利益にならない」ということに重きを置き、依頼者(ブリーダー等)に断尾・断耳時の麻酔による危険性や出血、感染症の危険性などについて説明するようにしてきたが、この度改めて獣医師会全体で決議を取り、方向性を明らかにしたというもの。

「アメリカ獣医師会は科学を基にしたアニマルウェルフェア(動物福祉)のポリシーを創造・決定する団体であり、協議会メンバーは容姿整形目的のこの行為を引き続きサポートする理由はないと信じる」そしてこの言葉の背景には動物福祉協議会(Animal Walfare Committee)が立っている。

アニマルウェルフェア動物福祉)」とはまだ日本で聞きなれない言葉だが、これは「動物が本来持ち合わせる性質の発現の自由」を意味している。犬や猫などの家庭で飼われている動物だけでなく、牛や馬・豚・鶏などの産業動物までをも対象にし、その基本になるのはあくまでも「ナニがその動物にとっての自然であるか?」ということ。

これまではヒトの要求を動物達に許容させてきた社会だったが、それも現代においては往々にして行過ぎ、これからは動物達の自然な主張をヒトが許容するべきではないか?と言うヨーロッパの動物保護の波は確実に押し寄せているといっていい。

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ヒトの知能を持てば動物を支配下に置くことなど簡単である。しかしそれが現在私たちの目指したい犬とヒトとの関係であるかは疑問。ヒトは犬の優れた嗅覚や聴覚・運動能力を認め利用してきたことを考えると、AKC が人工改良の歴史へ敬意を要求する以前に、私は犬という生き物自身に敬意を表したい。

アメリカ獣医師会はこの発表を持って、犬種クラブに対してスタンダード内にある断尾・断耳の項目の削除を呼びかけているが、これに対しアメリカ家庭犬種協会(AKC)は(断尾・断耳行為を)『美容整形』と銘打つのは「歴史的理解および純血種の機能性の欠如、そして敬意の欠如を暗示する重大な誤認識である」と反論している。

またこの度の発表の理由で面白いのは「アメリカ獣医師会学生部」という獣医師の卵たちの意見すらも考慮されているという点だ。獣医学生達の間では断尾・断耳行為に対し「不必要な痛みを伴う不快な手術」という感情が広がってきているほか、「獣医師という職業は変わりつつある。若い学生達は断尾・断耳行為を獣医学的な理由(治療および予防の目的)によるものとして捉えている」と学生部長(イリノイ大学4年生)は話している。 

さて、現実的には7万6千人以上の会員を持つこのアメリカ獣医師会の発表によりアメリカの犬の姿は変わらざるを得ない。

獣医師がしてくれないなら、じゃあ自分でするか?はたまた断尾・断耳に規制や反対の少ない近隣諸国で行わせるか?

日本はこれに対してどう反応するのだろう?洋犬種の原産国がこぞってスタンダードを変えてゆく中、それでも断尾・断耳行為を肯定し行い続けるだけの勇気は果たしてあるのだろうか?せめて来年の抱負に掲げてくれるくらいであればいいのだが。

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コメント

ほ〜アメリカで大きな動きがあったんですね。
ちょうど今日うちの犬を病院に連れて行ったら、待合室に断尾済みのドービー、コーギー、ボクサーがいて「お〜断尾三兄弟」とアホなことを思いながら「やっぱり切ってるのよねえ」と思いながら眺めていました。
AVMAのリンク先も拝読いたしました。
AKCとは全面的に対立しているのですねえ。
AVMA、本部がイリノイにあるせいか何だかリベラルな感じがします。
対するAKCはガチガチの白人保守層という雰囲気(あくまで私の印象で根拠はありませんが)リベラルVSコンサバという政治的な駆け引きの匂いも無きにしもあらず。法整備着手のとろさもきっと政治的なものが大きく絡んでいるのでしょうし、まさに将棋の駒の動きをみるような面白さはありますね。
幸い保守層の強い州でも断尾断耳行為は獣医師以外の者が行う事は違法であることがほとんどなので、この決定は大きな意味を持つ事と思います。
どうか無駄に痛い思いをする犬が無くなりますように。がんばれAVMC!
そして日本にも同じ動きが1日も早く出現しますように。

投稿: あが | 2008/12/17 15:44

>あがさん
「断尾三兄弟」!!(爆)←はまりました。

うん、まさに真っ向から対決してますね、アメリカ。
それだけに今回の発表は今後に大きな影響を与えると思います。
たぶんAVMAもそれを期待しているんじゃないかしら?
たしかメイン州の辺りでの運動も今回の決定に影響していましたよね。この辺なのかしら保守層が多いのって?(犬以外のことにはてんで疎いもので)

私はAVMAが「断尾・断耳行為は犬の利益にならない」ということに重きを置き、と断言しているのが凄いと思いました。
犬の側に立った意見であるというのが獣医師として頼もしいと感じています。

日本、変わるかなぁ?どうかなぁ?

投稿: 京子アルシャー | 2008/12/17 22:31

私も犬を飼う前「どの犬種にしようか」と図鑑を眺めていた頃、
断尾・断耳は、痛々しいと思い、何となくそれらの犬種は敬遠しました。
当時は、しないと何か不都合があるのかと思っていました。
そうこうするうちにオーストリアでも断尾・断耳等禁止になった事を知りまして、
うちのイタグレ(05年3月生まれ)は、前足にデュークローがついたままです。ですが、
何故か近所のうちのと同じ年のグレート・デーンは、断耳したんです。
あれは、やはり飼い主がどこか闇でやってもらったんだか、どうしたんだか、そういうことになると、また違う話で怖いです。


投稿: miniwindi | 2008/12/21 07:56

>miniwindiさん
miniwindiさんがお住まいのオーストリアでは2000年から法規制が始まりましたね。その後に生まれた犬で断尾・断耳をされているのはおそらく隣国チェコなどで施されたものだと思います。
なにしろチェコやポーランドでは純血種がまだまだドイツやオーストリアよりも安く、そしてドイツやオーストリアからわざわざその安い純血種を購入しにやってくる人たちも多いため、結構大きな市場を占めているようですから。
時々ベルリンでも純血種が盗まれ、ポーランドなどの隣国へ運ばれて闇繁殖に使われるという事件が起きています。これらいわゆる「犬マフィア」と呼ばれる組織の仕業だそうですよ。
もちろんこれを助長するのはそういった背景を知ってか知らずか安いというだけで購入してしまう消費者です。
そう考えるとやはり怖いですね。

投稿: 京子アルシャー | 2008/12/22 18:54

よかったですね。
あるポリシーに基づいて犬の品種が出来上がったわけですが、その後、時代と共にそのポリシー自体(ちょっと意味合いが違いますが)を柔軟に変更していく姿勢っていいですね。
もともとアメリカはある意味犬に対しては柔軟な国でもあるのではないでしょうか?
ドーベルマンにしても本国よりマイルドな犬に変わりましたし、デーン(ドッゲ)にもグレーハウンドを配し、新たなスタイルに変えましたし、そんな中で犬の福祉の面が変わらないはずがないですよ。きっとね。
でも2009年度の輸入版カレンダー(イギリス版)でもまだまだ断耳断尾されているものが日本では店頭にずらっと並んでいるし、日本でブームのジャックラッセルテリアも断尾しているものが大半ですから、まだまだ日本では時間がかかりそうですねぇ。
輸入版カレンダーが断耳断尾されてると、なんか日本人は(私も含め)鵜呑みにしちゃいそうですしねぇ。

投稿: rio | 2008/12/23 16:47

>rioさん
うっかりついでにもうひとつ、掘り出しました。すみません(^^;)
アメリカはさすが民主主義の国。いろんな主張が許されて、なんでもありのようだけど責任も付きまとう。
ただ個人のレベルと政治の段階ではまた少し差があるようで、それでもNGOなどが国民への影響力を持っているのが頼れるところだと思います。
一般への知識が浸透しきっていない日本で断尾・断耳行為を止めさせるならば、やはりメディアから。
来年のカレンダーは変わっていることを祈ってます!

投稿: 京子アルシャー | 2009/01/12 23:46

遅ればせながら、記事を読ませて頂きました。
アメリカでも規制の動きですか。
昨今の世界事情からはそうなって行くのかな、と思っていましたが。

私個人は断耳、断尾を否定も肯定もしていませんが。
ただ、周りで切った犬が多い為か切らない方が違和感でまくり、と言う事は有ります。
近所のグレートデンは切っています。そこで生まれた子ですが、その子だけ酷い耳の病気になってしまって、獣医や周りと相談して切ったそうです。時期的にちょっと遅かったのですが、ショーに出す訳でもないし、番犬兼ペットなのでしょうしょう見栄えが悪くてもいい、病気が治らない方が可哀想、と言う事でしたが、実際病気も良くなっています(そのかわり耳の立ちが中途半端ですが)

形成的な切断は余り良くはないのでしょうが。

で、ふと思ったのですが、スイス等は国外から旅行者や、長期滞在で入国する外国人が連れた断耳、断尾したいぬの入国も禁止なのでしょうか。
興味が有ります。

投稿: 昇汞 | 2009/05/05 11:08

>昇汞さん
いただいたコメントへのレスが自分でも呆れるほど遅れてしまい大変申し訳ない気持ちです。
それでも地道に過去記事まで読み続けていただいてありがとうございます。
お話にあるグレートデーンの断耳は獣医学的な見解から行われているので法の対象にはなりませんし、もちろん倫理の問題とも違ってくるでしょう。
耳の病気も下手すると軟骨組織にまで響いたり場所が悪ければ内耳にまで及ぶこともありますからあまり侮ってはいけませんね。
処置のための断耳を獣医師の手で適切に行われたのであれば問題はないと思います。
ただ事情を知らない人から質問されることが増えるかもしれませんね。

スイスの場合旅行者や短期滞在者の連れた断耳・断尾した犬は入国が許されています。
しかしスイス国内に居住届けを出す場合、これらの犬を連れて居住することはできません。
ドイツの場合そこまで厳しくはありませんが、ショーへの参加(リングに出すこと)は禁止です。
今でも時々断尾されたロットワイラーなどを見かけますが、これらお隣の国からのものが多いです。

投稿: 京子アルシャー | 2009/05/12 23:20






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