スロバキアの首都、ブラチスラバの街の様子。さすがに、ここでは猟犬種を見ることはめったにない。
スロバキアは、小さな国でありながら、南部と北部では地形が異なる。一つは、ドナウ河とその支流、そして南部ハンガリーへ続く平野部。もう一つは北部、東部にかけた山間地方。それで、猟に関して言うと、平野部では、シューティング、つまりキジ、カモ、野うさぎ猟が主となる。そして山間地方では、イノシシ、鹿など獣猟が占められる。
スロバキアに二つのタイプの猟犬(鳥猟犬と獣猟犬)が地犬として存在しているのは、このためである。平野部の鳥猟で威力を発揮する猟犬が、前回紹介したガンドッグのスロバキアン・ラフヘアー・ポインター。そしてカルパチアン山脈が走る西部ではイノシシ猟に活躍するやや小型のハウンド、スロベンスキー・コポがメジャーな猟犬となる。
さらに、山間部では、羊の放牧は季節により低地と高地に移動して行われる。夏は山間部に入り完全に人里から離れるので、それを見守る犬種が発達した。スロベンスキー・キュバックという、フランス原産のグレートピレニーズとよく似た白い大型牧畜犬だ。
もうひとつおまけに、と言ってはなんではあるが変り種の原産犬種がいる。チェック・ウルフドッグ。「チェコの」という名になっているがスロバキアとチェコはかつてはひとつの国。同時にスロバキアの国犬種にもなっている。
簡単にいえば、オオカミ犬。作業犬としての性能を高めるためにシェパードにオオカミの血を導入して近代になって確立させた種だ。が、現代の都市社会に適応するには、やや問題があると思う。ちなみに東欧あたりでは、ショードッグとしてなかなか持てはやされている人気ぶりだ。
東ヨーロッパの FCI ショーにてブレース・クラスに参加するチェック・ウルフドッグ。
スロバキアでもっとも多い原産国犬種は、コポである。原産国外ではまったくの珍種ではあるが、獣猟が文化にすらなっているスロバキアならでは。なんと私の住むスウェーデンの国王、カール・グスタフ16世がスロバキアを公式訪問した2003年、贈り物としてコポの子犬を譲り受けたほど。スロバキア人の 誇りがわかる。
当然私のコポへの関心は高く、スロバキアを訪れたときはすぐにでも会いたい犬種となった。しかし、このような猟犬種というのは、首都ブラチスラバの 街中を歩いて、すぐに見つけられるというものではない。あいにく山間部まで出かけることができず、とりあえずテリアで狐猟をするマテイさん(この方もかな り猟犬に関してはマニアックだったのだが)の友人の持つコポを見せてもらった。
ブラック&タンが特徴。スロベンスキー・コポ。
「イノシシ狩に最高の威力を発揮するんだ」
と開口一番。イノシシ猟の犬というのは、気質がきついのだろう、とやや偏見を持っていたものだが、コポは非常にフレンドリーで、そもそも気質がとても明るいから驚きだった。
「イノシシ狩に本当に適した犬というのはね、気が強いだけじゃだめなんだよ。イノシシを常に追い立てるタフさをそなえながら、適当に距離も保つ。ほんのちょっとの気の柔らかさがなきゃだめ。さもないと、イノシシに逆に襲われて命を落としてしまうからね」
それがこの社交性に現れているのだと言う。要は従順性。横で聞いているテリア・ファンのマテイさんはハハハと笑い、
「僕の犬は首から胴にかけて牙に突かれても大丈夫であるよう、防御服をつけてイノシシ狩に向かうんだぜ」
と少し競争心を燃やした。
スロバキアにおけるコポのブリーディングは熱心にして非常に真面目。猟犬は、全て狩猟テストに合格してから繁殖を許すなど、犬種の性能は確実に守られている。もっとも誰もこの犬をペットとして飼う人はいないからだろう。だが、手ごろなサイズでなかなか美しく、可愛い犬であった。
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