オランダのチューリップドッグ、ことマルキーシェ。FCI では第9グループに属する小型愛玩犬。古い犬種を復活させた例である。
北ヨーロッパは今やチューリップの花盛り。それでオランダを思い出した。オランダにはチューリップのような可憐な犬がいる。ニックネームもチューリップ・ドッグ。正式名はマルキーシェという。オランダの原産犬種だ。これは非常に珍しい。どんなに日本の犬種図鑑を探しても、ちょっとやそっと(?)で見つけられる犬ではない。
オランダのとある町に住むマルキーシェの愛好家ギアさんのお宅を訪れた。ピンポンを押してまもなく、玄関から勢いよく飛び出してきたマルキーシェ達は、泳ぐ黒出目金のように、艶々の黒毛衣をたなびかせる素敵な愛玩犬種であった。
大きさとしては小型の中型犬種。歴史的には昔から貴族に可愛がられていたコンパニオン・ドッグということだが、ベタベタとした甘ったるい感じではない。
「マルキーシェはまだ国内でも保護されているの。国外の人には渡せないわ。それは私達マルキーシェ愛好会の規則でもあるのよ」
門外不出のお宝犬。欲しいと思っても絶対に手に入らない犬種もいる。この物質文明において、そんなハードルがまだ存在するというのは、逆になんだかうれしい。オランダ人の動物倫理精神が伺える。
マルキーシェ愛好会で事務長を勤めるギアさん。熱心で真面目なブリーダーでもある。
マルキーシェは古い犬だけれども、近代に入ってイギリスの愛玩犬に押され純血種の世界から消えた。そして後になって人工的に新しく作り出された犬種だ。従って人口も、また犬種としてもまだ完全には確立していない。愛好会としては、小さな遺伝子プール内で血縁交配などがおこらぬよう、犬種として健全性が確信できるまでに数を増やす計画だそうだ。それも自分の目の届く範囲内でしっかり監視しておきたい。そこで現時点では外国には売らないルールを、全てのマルキーシェのブリーダー、飼い主に課している。のみならず、愛好会はマルキーシェ繁殖について様々な規則を設けている。面白いではないか。一つの犬種作成に向かって愛好家達が努力するプロセスというのはまさにこのことだろう。
スパニエル似の元気な小型犬。でも、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルよりは、すらりとしてもっとスポーティな感じだ。
それにしても一度消えてしまった犬種をどう復活させたのか?
ギアさんによると、田舎などにいくと、農家の軒先などにマルキーシェ然とした黒っぽいスパニエル犬は雑犬としてまだ残っていたりすることもあるという。そんな犬をかき集めて、犬種作成に着手したのだそうだ。
「私が飼った初めてのマルキーシェのヴァゼルは最初は雑種だったのですよ」
当時彼女はマルキーシェのことなど何も知らなかった。施設で見つけた子がたまたまヴァゼルであった。その後、いっしょにドッグ・スクールに参加したときのこと。ある女性が彼女を引きとめた。
「まぁ、あなたの犬、これ、マルキーシェじゃない!」
彼女の勧めでギアさんは当時すでに設立されていたマルキーシェ愛好会の催すクラブ・ショーにヴァゼルを連れて訪れた。そして審査員にそのミックス犬だとばかり思っていた愛犬を見てもらった。と、やはりヴァゼルは紛れもなくマルキーシェの「タイプ」であり、彼はギアさんにとって思いがけない「掘り出し物」となったのだ。
「今でも軒先や海岸にうろついている黒いミックス犬の中にどんどんマルキーシェが発見されているんです。タイプがスタンダードとして一致していれば、血統ブックに登録します。私達の犬種はまだまだ建設途中にあるんですね。」
弁護士でもあるギアさんはオランダ・マルキーシェクラブの事務長。スタンダードを確立させ、よき犬種の発展に全力を尽くす。
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はじめまして、
以前に藤田様のマルキーシェに関する記事を雑誌で見かけて以来
マルキーシェにぞっこん惚れ込んでいます、
ここのところ書店の犬種図鑑にも登場する様になってきましたが
いまだに、日本では手に入らないのでしょうか?
もし最新の情報をご存知でしたらご教授願えませんでしょうか?
こちらのコメントで差し支えのある場合、メールででも・・・
ネットや書籍でも藤田様以外に詳しい方が発見できませんでした、
一面識もなく、いきなりこの様なお願いをする無礼をお許し下さい。
投稿: 心ひかれし者 | 2009/11/11 16:52
心ひかれし者さん
一番いいのは、オランダのケネルクラブを探して、そこから、マルキーシェの愛好会の連絡先を教えてもらう。そして、ブリーダーを教えてもらってメイルを書くなり、自分がどれだけ真面目な気持ちでその犬が欲しいという気持ちを伝える…で、たぶん、オランダ人は飛行機に子犬をのっけてポンと送るようなことは絶対にないと思います。ちゃんとそのブリーダーのところに訪問して、またブリーダーがどれだけ真面目にブリーディングしているか、あるいはどれだけ自分が真面目に犬を飼いたがっているか、誠意をみせれば、もしかして譲ってくれるかもしれません。でも、まだスウェーデンにも来ていないので、たぶん、「解禁」していないはず。あと5年ぐらいかかるのではないかしら。きちんと健全な個体数が確立するまで、オランダは外にださない予定です。
投稿: ふじた | 2009/11/11 20:11
藤田様
早速のご助言ありがとうございます、
私、オランダはもちろん海外には一度も行った事はなく
語学につきましても母国語の日本語すら怪しい始末ですので
今しばらくの間はマルキーシェに”片思い”で留めておく事と致します。
投稿: 心ひかれし者 | 2009/11/12 07:07
心ひかれし者さんへ
たくさんの稀な犬種に今まで、ヨーロッパ中で会って来たのですが、もちろん私も、ほしい~と思ったことも何度もありました。でも、時に現地でその犬のことをよく知っていて、どのように犬種を保存していくのか、本当にわかっている人によって守られたほうがいい、と思うことが何度もあります。
なんでも欲しいものが手に入る今という時代、やっぱり生き物に関しては、こういう「かなわない」という難しさがあってもいいと思うのです。そして片思いのままにとめておく、って言うのも、その犬へのすばらしい愛情だと思うのですよ。
むしろ、お金に任せて何が何でも手に入れる、という行為よりも。その気持ち、大切にして置いてくださいね!
投稿: ふじた | 2009/11/12 14:16