トップ >  生態・行動 > 犬にスイッチが入るとき (2)

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追いかけっこ遊びが好きな犬。この遊び心は実は大きく狩猟本能に由来している。

口に何かをくわえているので、それをとりあげようとすると、背を向けて逃げてしまう犬、この行動の裏にはいくつかの要素がからんでいる。まずは取った獲物を取られまいとする独占欲。それから犬の社会性と関連したもともと持っている遊び心。さらに遊びが遊びとして成り立つのに必要な、追いかけるのが好きという狩猟本能。

物をくわえた犬がわざと他の仲間のところにいって、「ほら!」と差し出すことがある。いざその犬が物品をとろうとすると、体を翻し逃げの体勢。相手が追いかければ、それ!と追いかけっこ遊びの開始。飼い主になかなか口にくわえたものを取らせようとしない犬の心の中には、そういった狩猟本能に根ざした遊びを誘っている意図があった。取ろうとする飼い主の行動が犬のスイッチを発動させている。別に犬はあなたに意地悪をしようとしたわけではなかったのだ。

というわけでスイッチは犬の本能らしい行動が目覚めた時と定義したのは前回説明したとおりだ。そしてその本能がなせる狩猟行動は、今でも犬の行動レパートリーの中にまだまだ深く残っている。

狩猟動物の一連の行動は

  1. 獲物を探す
  2. 狙いを定める
  3. 忍び寄る
  4. 追いかける
  5. つかむ、噛む
  6. 殺す

で成り立つ。この中の一つ、二つをたいていの犬は兼ね備えている。特に「獲物を探す」、「追いかける」、「つかむ」、という行動は犬の見せる遊びのなかにもふんだんに盛り込まれているので観察してみるといい。木の棒などを投げると喜んで追いかける。これは逃げる獲物を追いかける本能に由来している。ピーピーなるおもちゃを見せると、とつぜん目の色を変える犬に覚えはあるだろう。スイッチの入った瞬間だ。自転車を見て、吠え出す犬。これも、追いかけるという狩猟本能が由来している。犬からすると、走ってやってきて通り過ぎる自転車は、自分から逃げている獲物、と目に映る。「逃げる物体」が犬のスイッチを押してしまった、というわけだ。

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おそろし~い犬を見たら走って逃げたらだめだ。スイッチをONしてしまう。子供に犬を接させる時にも、このことをちゃんと教えてあげよう。

スイッチの活用について、私の失敗エピソードを披露しよう。ただし馬についてなのだが…。飼っているメス馬シェットランドポニーのロンディが牧草地から逃げてしまったことがある。彼女を捕まえようとして近くまで行くと、柵に入れられるのを知っているので、するりとかわされてしまう。そこで大好きな角砂糖をポケットからだして、それを馬の口に近づけおびき寄せるように同時にすっと手をひっこめた。この方法、馬に適用できるのか、とここで疑問に思った方、するどい!そう、手を引っ込めた瞬間、我ながら「何をやっているのだ」と苦笑してしまったものだ。これ、長年犬を飼っているために培われた癖だ。犬の追いかけたい欲を利用して、物を見せながらそれを引っ込め、スイッチをオンさせこちらに誘出だす、という習慣がつい馬と接するときにもでてしまったのだ。

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もちろん、ロンディは私の押したスイッチに反応して作動することもなく…。なぜなら馬には逃げるものを追いかけて捕まえるという欲などない。彼らの食べ物は、なんといっても地面にはりついたまま動くことのない草(ただし群れの力関係の中で他の馬を追いかけたり、防御の意味で追いかけることはある)。こんな比較の中でも、日常どれだけ犬の行動が狩猟本能に基づいているか、そのスイッチをまた私たちも知らず知らずに利用しているか、が分かると思う。

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